19.裁判所 19−1 裁判所の地位と性格     1.独立の法原理機関   政治部門との関係    裁判所は「法の支配」の実現者としての役割を期待された機関。    非政治的・非権力的機関 自由主義・個人主義的機関    受動的機関‥持ち込まれる紛争を契機に法の客観的意味を探り、それを適用することによって紛争を解決する。   国民主権との関係   →司法権の独立は国民からの独立をも意味する。裁判所が解釈・適用する法は国民代表機関によって定立されるもので    あるから国民主権原理とは矛盾しない。   →裁判の正当性の根拠は国民の信頼にある。 2.合憲性の統制機関 →裁判所の法政策形成機能 3.権力分立の中での裁判所の地位   立法権との関係−判例による一般的な規範の定立は立法とどう異なるのか。   →受動的であること、効果の点でも法源としての力が異なる点で差異がある。   行政との関係   →法律の意味を確定する点では行政と司法は同様であるが、行政はその決定内容を実現する機関である点で異なる。 19−2 司法権     1.司法権の概念  …具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用 2.法律上の争訟  (1)法律上の争訟の意義    裁判所法3条1項 裁判所は、日本国憲法に特別の定めのある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律      において特に定める権限を有する。    §法律上の争訟  当事者間の具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛争    { 法律の適用により終局的に解決しうべきもの  (2)裁判所の審査権が及ばない場合    抽象的な法令の解釈または効力を争うこと 単なる事実の存否、個人の主観的意見の当否、学問上・技術上の論争など 純然たる信仰の対象の価値または宗教上の教義に関する判断自体を求める訴え、単なる宗教上の地位確認の訴え    宗教問題が前提問題として争われる場合 紛争の実体ないし核心が宗教上の争いであって、紛争が全体として裁判所による解決に適しない場合 →法律上の争訟の1要件は満たしても、2要件は満たさない。 紛争自体は全体として裁判所による解決に適しないとは言えない場合( 住職の選任ないし罷免の手続上の問題)   →裁判所の審査が行なわれるが、宗教団体の自律的判断を尊重すべきである。手続上の問題のみ判断する。  (3)客観訴訟…具体的事件性を前提とせずに出訴する例外的制度    民衆訴訟…国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、自己の法律上の利益に関わらな      い資格で提起するもの(選挙訴訟・住民訴訟)    機関訴訟…国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての争訟   *客観訴訟と司法権(具体的事件性の要件)の関係。B+    →司法権の範囲外(通説):客観訴訟は事件性の要件を欠き、司法権の範囲外である。裁判所法3条1項後段の「そ         の他法律において特に定める権限」として認める。 司法権の範囲内:現行法上の選挙訴訟や住民訴訟のように法令が処分等の国家行為として具体化された段階に於て      は事件性の要件は実質的に満たされている。 3.司法権の限界  …法律上の争訟として司法権の範囲に含まれたとしても、司法判断がなされない場合  (1)憲法に規定があるもの    国会議員の資格の争訟(55)    裁判官の弾劾裁判所(64)  (2)国際法によって定められたもの    国際法上の治外法権    条約による裁判権の制限  (3)憲法の解釈上の限界   1)議員の自律権に属する行為    *国会内部での議事手続について裁判所は審査できるか。A →通判)裁判所は両院の自主性を尊重すべきであって、両院における法律制定の議事手続の適否には審査権は及ば      ない。r.政治的部門の内部的自律の尊重。権力分立から。   2)行政庁の自由裁量行為→但し、裁量権を著しく逸脱した場合には及ぶ。   3)統治行為    …直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為で、法律上の争訟として裁判所による法律的な判断が理     論的には可能であるのに、事柄の性質上、司法審査の対象から除外される行為    *統治行為を認めることが、法の支配を原則とする憲法のもとで許されるか。A →否定説 r.法治原則と司法審査の貫徹こそが憲法の要請である。  肯定説 自制説 r.司法審査を行なうことによる混乱の回避のため、法政策的観点から裁判所が自制すべき。  内在的制約説(判例)r.国民主権下では高度の政治性を帯びた行為の当否は民主的機関である国会・         内閣の判断に委ねられている。三権分立・民主主義的責任原理からの要請。  →但し、明文もなく不明確な概念のため一定の歯止めが必要である。    機関の自律権・自由裁量権などで説明できるものは除外すべきである。    民主政の過程で回復しえない権利侵害( 精神的自由権の侵害)を争点とする事件には適用すべきでない。    その他、権利保護の必要性、裁判の結果生ずる自体、司法の政治化の危険性、司法手続の能力の限界、判決      実現の可能性などの具体的事情を考慮しつつ、統治行為の概念と範囲を厳しく限定すべきである。  (4)団体の内部事項に関する行為−「部分社会の法理」の可否    *自主的な団体の内部紛争に対して、司法審査が及ぶか。A →判例)一般市民法秩序と直接関連しない純然たる内部紛争は、全て司法審査の対象とならない(部分社会の法理)    r.自主的な団体は、一般社会の中にあってこれとは別個に自律的な法規範を有する特殊な部分社会である。    c.法秩序の多元性を前提とする一般的・包括的な部分社会論は不当である。  内部問題に司法審査が及ばないとする理由が不明確である。  芦部)内部の事項に司法審査が及ぶか否かは、個別具体的に検討して決すべきである。       r.それぞれの団体の目的・性質・機能やその自主性を支える憲法上の根拠はさまざまである。    *地方議会議員に対する懲罰決議の効力について司法審査が及ぶか。B →通説)除名処分には及ぶが、出席停止には及ばない。    r.除名処分は一般市民法秩序につながる問題だから及ぶが、出席停止は議会内部の問題に過ぎないので地       方自治尊重の観点から及ばない。 国会議員については一切及ばない(権力分立の要請)。    *大学の単位認定行為に対して司法審査が及ぶか。B →通説)卒業認定には及ぶが、単位認定には及ばない。    r.卒業認定は一般市民法秩序につながる問題だから及ぶが、単位認定は純然たる大学内部の問題に過ぎな       いので大学の自治尊重の観点から及ばない。    *政党の党員の除名処分の効力について司法審査が及ぶか。B+ →通説) 一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審査権は及ばないが、  一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、除名処分の当否は、適正な手続に則ってなされ       たか否かによって決すべきであり、その審理もその点に限られる。    r.政党は議会制民主主義を支える上において極めて重要な存在であるから、政党に対しては高度の自主性        と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。 4.司法権の帰属   第76条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。    特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。    すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。  (1)特別裁判所の禁止(76条2項前段)   …特別の人間または事件について裁判するために、通常裁判所の系列から独立して設けられる裁判機関    ※普通裁判所に上訴できるのであれば特別裁判所ではない。  (2)行政機関による終審裁判の禁止(76条2項後段)    ⇔行政機関は前審としてならば裁判(行政審判)を行なうことも認められる。行政権と司法権の役割分担。 実質的証拠の法則…実質的証拠があるときには、裁判所は独立行政委員会の事実認定に拘束されるとするもの。   *独立行政委員会の準司法的手続に導入された実質的証拠法則は、憲法76条1項2項に反しないか。A    →通説)反しない。   r.必要性−専門的・技術的な性質を有する事件は、専門的な知識を有する独立行政委員会の事実認定を尊重      することが迅速かつ適切な事件の解決に資する。 許容制−実質的証拠があるときのみ裁判所は拘束され、しかもその有無の判断は裁判所が行ない、それが       ない場合には裁判所は審決を取消しうるのであるから、絶対的に拘束されるとはいえない。  (3)内閣総理大臣の異議の制度   *行政処分の執行停止に対する内閣総理大臣の異議の制度(行政による行政処分を裁判所が執行停止処分にした場合に、    内閣総理大臣の異議があれば裁判所はそれに拘束されるというもの)は司法権に対する行政権の干渉を許すものとし    て違憲ではないか。B    →合憲説 r.本来は行政作用の一種であるから、総理が行政作用に文句を言うのは当然の権利である。      執行停止権限は本来的な行政作用の司法権への移譲であり、その移譲に当たってどのような条件を付           すかは立法政策の問題である。 違憲説 r.行政処分の取消を司法作用であるとする限り、取消に比べて付随的なものである行政処分の執行停止       (佐藤幸) 権限を行政作用と見るのは両者の均衡を欠く。執行停止権限は司法的救済を与えるために極めて重要      な権限であり、この種の制限が性質上行政処分だと解するのは、権力分立が元来法の支配を実現する           ためのものであるという趣旨にもとる。 19−3 裁判所の組織と権能     1.裁判所の組織  (1)最高裁判所と下級裁判所(高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)    三審制(地裁→高裁→最高裁)  (2)最高裁判所の構成と権限   第79条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判     官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。      最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後     10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。      前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。    審査に関する事項は、法律でこれを定める。      最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。 70歳    最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することが        できない。   第81条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁        判所である。     権限  一般裁判権…上告+訴訟法で特に定める抗告についての裁判権  国家行為の合憲性審査権(81条)    最高裁判所規則の制定権(77条)  下級裁判所の裁判官指名権(80条)    下級裁判所・裁判所職員を監督すべき司法行政監督権  (3)下級裁判所の裁判官   第80条  下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、        任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。      下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することが        できない。   *「再任されることができる」の意義。裁判官の身分保障と関連して問題となる。B    →自由裁量説(実務):再任は任命権者の裁量に委ねられている。  c.裁判官の身分保障が著しく不安定になる。 羈束裁量説:執行不能の事実や弾劾裁判による罷免事由にあたる事実がない限り、再任が原則である。  r.文理的にも妥当である。任期の定めはこの期間ごとに特別の事由ある不適格者を排除するために設      けられたものにすぎない。 身分継続説:裁判官は再任される権利を有する。c.文理的に無理である。  (4)裁判官の指名・任命    指名   任命   任命の条件 認証    最高裁判所長官 内閣の指名  天皇が任命 内閣の指名に基づく    最高裁判所裁判官         内閣が任命   天皇が認証    下級裁判所裁判官   最高裁の指名 内閣が任命 最高裁の指名した者の名簿に基づく 高裁長官のみ天皇が認証 内閣総理大臣 国会の指名  天皇が任命 国会議員であること 国務大臣        総理が任命 過半数が国会議員たること  天皇が認証 2.国民審査   第79条  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その       後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。    前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。    審査に関する事項は、法律でこれを定める。    *最高裁判所裁判官の国民審査制度の法的性質。A   →解職説(通判):リコール制(解職制)である。  r.79条3項は国民審査の法的効果として裁判官が罷免されるとしている。憲法は最高裁判所の裁判官が任命     されてから国民審査によって罷免の有無の審判を受けるまでの裁判官の地位についてなんら特別の規定を設    けていない。これは任命行為によって最高裁判所裁判官の任命は完了するものと解するのが妥当である。    任命確定説:任命行為を締結確定させる行為である。 c.任命後国民審査までの間の裁判官の地位を合理的に説明できない。    二面性格説:原則リコール制(解職制)だが、任命後第一回の国民審査がなされる裁判官については、内閣の任命を       確認する意味がある。 r.もし単純に解職だけの意味ならば、任命後一定の期間を経てからその実績を踏まえて審査に付するほ         うが妥当であるにもかかわらず、憲法はまず任命後の初の総選挙に際して行なうことを明定している。  *罷免の可否について不明の者の票を罷免を可としない票に数える現行制度は妥当か。   →解職説‥合憲。r.国民審査の性質はリコール制であり、よって積極的に罷免を可とするものとそうでないものとを      分け、前者が後者より多数であるかがわかれば良い。    任命確定説‥違憲である。    二面性格説‥現行法の方式が違憲だとは言えないとしても、信任は○、不信任は×、棄権は無記入という方法の方が       妥当である。r.棄権を認めるべきである。  *最高裁判所裁判官に任命され、既に国民審査を受けた者が長官に任命された場合、更に審査を受ける必要があるか。B   →実務)不要である。r.長官も最高裁判所の裁判官の1人であるから、最高裁判所の裁判官としての任命に付き国民        審査に付されれば足りる。    佐藤幸)必要である。r.審査は任命を契機に行なわれることになっているが、長官とその他の裁判官は任命方法が        異なっている。長官という地位の特殊性を考慮すべきである。 3.裁判所規則制定権   第77条  最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及ぴ司法事務処理に関する事項について、規     則を定める権限を有する。        検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。    最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。  (1)趣旨  自主性確保  専門性重視  (2)規則と法律の関係   *77条列挙事由を法律でも定めることができるか。法の支配という観点から、特に裁判所の地位を強化するために、    規則制定権を裁判所に独占させたという発想があるため問題になる。A    →競合事項説(通判):法律でも定めることができる。  r.国会の唯一の立法機関性から、その例外として法律の介入を排除するためには、その趣旨       の明文規定が必要である。 専属事項説:最高裁判所の専権事項である。r.裁判所の自主性確保という要請の強調。 一部専属事項説(佐藤幸):内部規律と司法事務処理に関する事項は規則の専権事項である。r.自律権   *刑事手続について規則で定めることが可能か。31条が「法律」で定めることを要求していることから問題となる。B    →通説)刑事手続の基本構造及び被告人の重要な利益に関する事項は、法律の所管に属するが、訴訟手続の技術的・     細目的事項は規則の所管として認められる。r.刑事手続は、人身の自由に関連することが多い。 芦部)法律事項についても、法律で規定されない限り、規則で定めることができる。   *規則制定権の範囲内の事項について、法律と規則が競合した場合、その効力関係をいかに解すべきか。A    →規則優位説:規則に法律よりも強い効力を認める。r.規則制定権の特殊性を考慮すべきである。 両者同位説:両者の効力は「後法は前法を廃する」の関係に立つ。よって規則が法律に優位する場合もある。 法律優位説(通説) r.国民主権原理のもとでは国民代表機関である国会の制定した法律が最も強い形式的効力      を持つのが原則である。憲法41条の趣旨。刑事訴訟については憲法31条の要請。 4.裁判の公開   第82条  裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。      裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公        開しないでこれを行ふことができる。但し、政治氾罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国      民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。  (1)趣旨  裁判の構成の確保  (2)原則−対審と判決の公開     例外−公開の停止(82 )→「公の秩序または善良の風俗を害する虞」がある場合。     但し− 政治犯罪  出版に関する犯罪  この憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件     については常に公開。  (3)公開=傍聴の自由    *メモの採取の禁止は公開原則に反しないか。B     →判例)21条の精神から特段の事情のない限り、傍聴人の自由に任せるべきである。 5.陪審制  (1)種類    大陪審…一般国民の中から選任された陪審員が、正式起訴をするかを決定するもの。    小陪審…一般国民の中から選任された陪審員が、審理に参加し表決するもの。    参審制…一般国民の中から選任された参審員が、職業裁判官とともに合議体を構成して裁判するもの。  (2)可否   *日本国憲法のもとで、陪審制を設けることができるか。「裁判所」に司法権を与える憲法の趣旨に反しないかが問題と    なる。A    →否定説 r.司法権が一元的に裁判所に帰属することを定める76条1項に抵触する。 肯定説(通説):裁判官が陪審の表決に拘束されないものである限り、陪審制を設けることも可能である。    r.76条は訴訟手続の全てが全部裁判所によってなされなければならないとしているのではない。  裁判所が拘束されない限り32条や76条3項に反しない。 肯定説(佐藤幸):陪審の事実認定の適正を確保するため裁判官が一定の役割を果たすようになるなどの条件があ        れば、表決に拘束力のある陪審制を設けることもできる。 c.司法権に事実認定を含むとすれば、司法権の独立の趣旨から問題が残る。   19−4 司法権の独立     1.司法権の独立の意義  (1)司法権の独立が要求される理由    司法権の担い手であるから。    ‥司法権は非政治的権力であり、政治性の強い立法権・行政権から侵害される危険性が大きい。    違憲審査権の担い手であるから。    ‥司法権は裁判を通じて国民の権利を保護する職責を有しているので、政治的権力の干渉を排除し少数者の保護を図     ることが必要である。  (2)内容    裁判官の職権の独立    司法府の独立 2.裁判官の職権の独立   76条  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。  (1)意義   「良心に従い」…裁判官が有形無形の外部からの圧迫ないし誘惑に屈しないで、自己内心の良識と道徳感に従うこと。   *「良心」の意義。B    →主観的良心説(平野):裁判官個人の主観的な良心である。 客観的良心説(通説):良心とは裁判官としての良心を言う。   r.裁判官の個人的良心と法の命じるところが食い違った場合には、法が優先すると解する         のが、法による裁判の大原則である。  (2)職権の独立の強化に仕える制度    裁判官の身分保障(78条等)  行政機関による裁判官の懲戒処分の禁止(78条後段)    下級裁判所裁判官の指名(80条)  司法行政監督権(77条・第6章全体の趣旨) 規則制定権(77条)  (3)職権の独立の侵害    外部勢力による侵害 (ex.議院の国政調査権) 司法内部における統制  一般国民やマスメディアによる裁判批判 3.裁判官の身分保障  (1)罷免の限定   第78条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾       劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。    心身の故障…裁判所の訴訟手続による。 実際の例はない。    公の弾劾‥弾劾裁判所(両議院の議員で構成される) 罷免事由は「職務上の義務に著しく違反し、または職務を甚だしく怠ったとき」「その他職務の内外を問わず、裁判     官としての威信を著しく失うべき非行があったとき」である。    任命欠格事由の発生(裁判所法46条)→弾劾裁判が必要である(通説)。    最高裁判所裁判官の国民審査(79)  (2)行政による懲戒処分の禁止    裁判所による懲戒は認められる。(寺西判事補事件)  (3)相当額の報酬の保証(79 ・80 ) 4.司法権の独立と司法の独善化防止  →司法権の独立を原則として考え、司法の民主化という民主主義の要請はあくまで司法権の独立を害さない限度での民主   的統制のみ認められる。   ・民主的統制の内容    1国民による最高裁判所裁判官の国民審査  2国会による弾劾裁判所の設置  3議院による国政調査    4裁判の公開  5表現の自由  6陪審制・参審制